ペルチェモジュールの放熱器について

ペルチェモジュールの放熱器として使用するヒートシンクの熱抵抗、それぞれの特徴や注意点について紹介しています。

目次

放熱器について
ヒートシンクの熱抵抗
ペルチェモジュールへの取付け
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放熱器について

ペルチェモジュールは一方の面からもう一方の面へと熱を移動させるヒートポンプ素子となりますので、ヒートシンク等の放熱器が必要となります。ペルチェモジュールの性能を十分に発揮させるために、適切な放熱器を選定してください。

ヒートシンクの熱抵抗

ヒートシンクの能力は熱抵抗Rthで表されています。熱抵抗が小さいほどヒートシンクの放熱能力は高くなります。自然空冷ヒートシンク > 強制空冷ヒートシンク > 水冷ヒートシンクの順に熱抵抗は小さくなり、ヒートシンクの放熱能力は高くなります。

ヒートシンクの熱抵抗

 

ペルチェモジュールの放熱(加熱)側温度Th [K]、ペルチェモジュールからの放熱量Qh [W]とヒートシンクの周囲温度または冷却水温度Ta [K]から、ヒートシンクの熱抵抗Rth [K/W]の関係は下記のような式となります。

ヒートシンク熱抵抗計算式

ペルチェモジュールの放熱側温度Thは、ヒートシンクの温度とほぼ同一温度となります。ヒートシンクの温度は、一般的なペルチェモジュールのアプリケーションにおいて周囲温度(冷却水温度)より5~20℃高くなります。ペルチェモジュールからの放熱量Qhは、一般的な使用ではペルチェモジュールの成績係数COPは約0.5となり、ペルチェモジュールの吸熱量Qcの約3倍となります。

 

自然空冷ヒートシンク

自然空冷ヒートシンクは、2アンペア以下の低電流、低吸熱量の小型ペルチェモジュールの放熱器として、極めて限られたアプリケーションで使用されています。
自然空冷ヒートシンクでは、設置時におけるヒートシンクのフィンの向きが重要であり、ヒートシンクの放熱性能に大きく影響します。ペルチェモジュールとの取り付け検討の際には、対流を妨げないようにヒートシンクのフィンの向きに気を付けて設計を行ってください。自然空冷ヒートシンク

強制空冷ヒートシンク

強制空冷ヒートシンクは、ペルチェモジュールの放熱器として最も一般的に使用されています。ファンを伴った強制空冷ヒートシンクは、ファンにより空気をヒートシンクに強制的に流し込むことにより、ヒートシンクの放熱能力を向上させています。
強制空冷ヒートシンクでは、使用環境により長期間の使用によってヒートシンクのフィンに塵やほこりが堆積され、ヒートシンクの放熱能力が低下することもあります。必要に応じてフィルター等の設置もご検討下さい。

強制空冷ヒートシンク

水冷ヒートシンク

水冷ヒートシンクは、ペルチェモジュールによる冷却温度をより低く抑えたいアプリケーション向けに使用されています。水冷ヒートシンクは、熱を吸収させるための冷却水をヒートシンク内に流すことにより、ヒートシンクの放熱能力をさらに向上させています。
水冷ヒートシンクでは、使用する冷却水の種類等によってヒートシンク内での腐食が発生してしまうこともあります。腐食が発生しますと冷却水の流路を塞いでしまうことや、流路が破れて漏水が起こりヒートシンクの放熱能力が低下することもあります。冷却水の選定に気を付けてください。

水冷ヒートシンク

ペルチェモジュールへの取付け

ペルチェモジュールとヒートシンクや冷却板等の熱交換器部品との接触面は、十分に洗浄して下さい。

ペルチェモジュールの放熱面は、放熱側のヒートシンクとの接触面に熱伝導材料(サーマル インターフェイス マテリアル/TIM)を介して取り付けます。取り付けの際には、ペルチェモジュールとヒートシンクの接触面の間に空気が残らないように注意して下さい。空気が入り込むとペルチェモジュールからの放熱の妨げになり、性能を引き下げてしまいます。また、ペルチェモジュールの表面温度が局所的に上がり、故障の原因となります。

次に、ペルチェモジュールの吸熱面は、冷却板(吸熱側のヒートシンク)との接触面にも熱伝導材料を介して取り付けます。この際も、ペルチェモジュールと冷却板の接触面の間に空気が残らないように注意して下さい。

放熱側のヒートシンクと吸熱側の冷却板の間、ペルチェモジュールの周囲には断熱シートを設置することを推奨します。断熱シートにより、放熱側(加熱側)の熱が吸熱側(冷却側)へ戻ることを防ぐことができます。

ねじによる取り付け

取り付けねじは、下図のようにペルチェモジュールの辺側に配置して下さい。

ばね座金(スプリングワッシャー)、平座金(平ワッシャー)、断熱ブッシュ(樹脂製ブッシュ)を通したねじで冷却板とヒートシンクを締め付けます。

ねじを締め付ける際には、トルクドライバー(トルクレンチ)を使用し、図の①②③④の様な対角線状になる順番で徐々に締め込み、仮締めを行って下さい。

その後、同様に対角線状になる順番で本締めを行って下さい。ねじを締め込む際には、片締めにならないように気を付けて下さい。ペルチェ取り付け図(ねじ)

ねじの締め付けトルク

ねじのトルク計算式

ねじの締め付けトルクT [N∙m]は、トルク係数K、ねじの呼び径d [m]、設定圧力p [N/m2]、ペルチェモジュールのセラミック基板の面積A [m2]から、右のような式で求めることができます。

  • トルク係数K :通常では0.2となります。
  • ねじの呼び径d [m]:M3ねじの場合0.003 m、M4ねじの場合0.004 mとなります。
  • 設定圧力p [N/m2]:推奨値は1 000 000 N/m2となります。
  • ペルチェモジュールのセラミック基板の面積A(長さ×幅)[m2]

計算例:
セラミック基板の寸法が40×40 mm(0.04×0.04 m)のペルチェモジュールを、M3ねじ4本で締め付ける際のトルクは、

ねじのトルク計算式例

から、0.24 N∙m(24 cN∙m)となります。

取り付け時の注意

ペルチェモジュールは、ヒートシンク等の熱交換器に取り付けてから通電して下さい。熱交換器に取り付ける前に通電しますと、ペルチェモジュールの温度が急激に上がり故障の原因となります。

ペルチェモジュールを取り付けるヒートシンクの表面は、平面度0.05mm以内で加工して下さい。また、ペルチェモジュールとヒートシンクとの接地面は十分洗浄し、熱伝導材料を介して設置して下さい。

ねじの取り付け位置は、できる限りペルチェモジュールに近い位置に来るように設計して下さい。

金属製ねじを使用する際には、必ず断熱ブッシュ(樹脂製ブッシュ)を使用して下さい。金属製ねじが放熱側のヒートシンクと冷却板に直接触れますと、熱がねじを伝わり戻って来てきてしまい、性能を引き下げてしまいます。

ねじの締め付け順番に気を付けて下さい。ねじを徐々に締め付けずに先に一か所のねじのみを強く締め付けると、ペルチェモジュールに偏荷重がかかり、ペルチェモジュールが破損してしまいます。

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